こんにちは!薬剤師としてさまざまな現場を経験してきた私ですが、今回は「学校薬剤師」のお仕事について紹介したいと思います。特にこの季節(この記事を書いたときは夏でした)になると気になるのが「プール水の衛生管理」。この記事では、学校薬剤師の基本的な業務と、プール水の採水・検査について詳しくお話しします!
学校薬剤師って何をするの?
学校薬剤師は、学校保健安全法に基づいて、児童・生徒の健康と安全を守るために活動する専門職です。地域の薬剤師会から推薦を受けて、各学校に配置されることが多いです。当県では「県薬剤師会」に加入していることが、学校薬剤師になれる条件となっています。私は病院薬剤師ですが、県薬剤師会にも加入しており学校薬剤師として日々活動しています。
主な業務内容
- 学校環境衛生のチェック(照度・騒音・換気・温湿度など)
- 水質検査(飲料水・プール水)
- 教室やトイレの衛生状態確認
- 保健室や薬品管理のアドバイス
- 生徒・保護者・教職員への薬物乱用防止教育
- 学校での感染症対策に関する助言
- オーバードーズについての指導や助言
年間を通して定期的に学校を訪問し、報告書を作成するのが一般的です。
プールの採水検査とは?
夏が近づくと本格化するのが「プール水の水質検査」。これは学校薬剤師の重要な仕事の一つです。安心して水泳指導を行うためには、適切な水質管理が欠かせません。プール水の水質検査は「学校保健安全法第5条、同施行規則第1条及び第24条に基づき、実施されます。当地域では市教育委員会と理化学分析センターで日程を決定し、市学校薬剤師会を通して各学校薬剤師へ伝達されます。
各学校薬剤師は指定された期日を担当校の養護教諭や教頭先生と協議し訪問日を決定します。プール水は必ず担当学校薬剤師が採水することとなっています。(但し、プール中央のプール水は授業中の児童・学生や体育教師にバケツに採水してもらうことが多いです)
プール水検査でチェックする主な項目
| 項目 | 基準値 | 検査目的 |
|---|---|---|
| 濁度 | 2度以下 | 不純物混入の確認 |
| 一般細菌 | 200個/mL以下 | 微生物汚染の確認 |
| 大腸菌群 | 検出されないこと | 衛生指標菌の有無 |
| 遊離残留塩素 | 0.4~1.0mg/L | 塩素の有効性確認 |
| pH | 5.8~8.6 | 肌・目への刺激を避けるため |
| 過マンガン酸カリウム消費量 | 12mg/L以下 | 有機物の混入 |
| 総トリハロメタン濃度 | 0.2mg/L以下 | 主にクロロホルムの検出 |
| 循環ろ過装置の処理水の濁度 | 0.5度以下(0.1度以下が望ましい) | ろ過の性能を確認 |
採水の手順とコツ(地区によって異なります)
採水の流れ
- 準備物の確認:
滅菌容器(大腸菌検査用)、検査試薬、pH試験紙、記録用紙、手袋など - 採水タイミング:
使用前(朝)に実施、プール中央表層から採取(水面下20cm ろ過水の出口から遠いほうへ3点+取水口付近の計4点を採水) - 検査方法:
– 残留塩素:色の変化で確認
– pH:試験紙やメーターで測定
– 細菌:検体を専門機関へ送付(保冷)
遊離残留塩素は0.4~1.0mg/Lとされておりこれはほとんど全て(大腸菌、一般細菌、アデノウイルス)を不活化できる濃度となっています。但し、1.0mg/Lを超える目の痛みが出ることがあり適切に管理されなければなりません。

報告書の作成と対応
検査結果は記録し、学校長宛に「学校薬剤師環境衛生検査報告書」として提出します。不適合項目がある場合は、速やかに改善指導を行います。
IWAKIの所属地区では水質検査センターに採水した容器を提出します。検査結果に問題がなければ後日結果が送付されます。現場で実際薬剤師が確認することは「残留塩素」、「消毒用試薬の確認」、「プールサイドの安全」、「その他衛生面」です。不適項目があればその場で指摘し、水質の検査結果に問題があれば水質検査センターより薬剤師会に連絡があり各学校薬剤師へ連絡します。
よくある指導内容
- 塩素注入装置の点検・調整
プールの消毒は、塩素剤を自動で注入する装置に頼っている学校が多くあります。注入量が不足したり、装置が不具合を起こしたりすると、水質が一気に悪化します。注入ポンプの動作、薬剤の残量、配管の詰まりなどを定期的に確認し、必要に応じて調整するよう伝えます。 - 清掃やろ過装置の稼働時間の見直し
ろ過装置は、水中の汚れや浮遊物を取り除いて水をきれいに保つ役割があります。稼働時間が短かったり、ろ材が汚れていたりすると、濁りや細菌の増加につながります。プールの利用状況に合わせて稼働時間を見直し、プールサイドや水槽内の清掃、ろ過器の逆洗なども定期的に行うよう助言します。(当地域では24時間稼働を推奨しています) - プールカバー(温度変化の最小化、異物混入の防止)の使用促進
使用しない期間にカバーをかけておくと、水温の上昇を抑えられ、細菌や藻の増殖を防ぎやすくなります。落ち葉、砂、虫などの異物が入るのも防げるため、水質管理の負担が軽くなります。特に、授業のない期間(休日や夏休み前後など)の活用を勧めます。 - 残留塩素濃度の調節
塩素は消毒の効果を保つために欠かせませんが、少なすぎても多すぎても問題があります。少ないと消毒が不十分になり、多いと児童生徒の目や皮膚への刺激、塩素臭の原因となります。基準の範囲に収まるよう、測定の頻度や注入量を調整するよう伝えます。 - 大腸菌、一般細菌の検出
大腸菌や一般細菌が検出された場合は、消毒が十分でない、ろ過が不十分、利用者の汚れが多いなどの原因が考えられます。塩素濃度、ろ過装置、プールサイドの清掃などを総合的に見直し、改善後に再検査を行うよう指導します。
まとめ:子どもたちの安全を支えるプロの仕事
「学校薬剤師」はまだあまり知られていない存在かもしれませんが、学校現場に欠かせない健康管理の専門職です。特に夏場のプール管理は、感染症予防に直結する重要な業務です。
専門知識と観察力、そして細やかな対応力が求められる現場ですが、子どもたちが安全に学校生活を送るために、薬剤師として力を発揮できるやりがいある仕事でもあります。
参考
プールアメニティ協会JPAA 公益社団法人 日本プールアメニティ協会
学校環境衛生管理マニュアル学校環境衛生管理マニュアル 「学校環境衛生基準」の理論と実践[平成30年度改訂版]
2026年10月18日 一部加筆・修正


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