令和8年(2026年)4月6日より、感染症法に基づく「薬剤耐性緑膿菌感染症」の届出制度が大幅に改正されます。厚生労働省の通知(令和8年2月5日付 感感発0205第2号)により、これまでの「指定届出機関による定点把握」から、全ての医師に届出義務が生じる「全数把握疾患」へと移行し名称が「薬剤耐性緑膿菌感染症」から「多剤耐性緑膿菌感染症」に変更されることが決定しました。
今回の変更は、薬剤耐性(AMR)対策の強化を目的としたものであり、全ての臨床医にとって避けて通れない実務上の変更となります。感染制御認定薬剤師の視点から、その重要ポイントを解説します。
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1. 「定点把握」から「全数把握」への移行と法的義務
今回の改正により、多剤耐性緑膿菌感染症は「五類感染症(定点把握疾患)」から、診断したすべての医師が報告義務を負う「五類感染症(全数把握疾患)」へと位置づけが変わります。
この変更は、感染症法第12条第1項に基づき、診断した全ての医師に法的な届出義務を課すものです。第11回薬剤耐性(AMR)に関する小委員会等において、指定届出機関における届出数の減少等が指摘されたことを受け、国内の発生動向をより精密に把握するために全数把握化が了承されました。
主な変更点と疾患リストの再編
今回の改正では、名称の変更とともに、感染症法上の疾患リストの番号(記載位置)が大幅にシャッフルされています。
| 項目 | 変更前(2026年4月5日まで) | 変更後(2026年4月6日から) |
| 疾患分類 | 定点把握(指定機関のみ) | 全数把握(全医師・全医療機関) |
| 疾患名称 | 薬剤耐性緑膿菌感染症 | 多剤耐性緑膿菌感染症 |
| 届出義務者 | 指定届出機関の管理者 | 診断したすべての医師 |
| 記載位置(第6) | 51 | 16 |
※この移動に伴い、従来の番号16から46までの疾患は1つずつ繰り下げられ、ペニシリン耐性肺炎球菌感染症の記載位置も「50」へと変更されるなど、五類感染症全体の構成が再編されています。また、届出基準の文言自体も、主語が「指定届出機関の管理者は…」から**「医師は、」**へと明確に改められました。
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2. 培養検査・薬剤感受性試験の新基準
届出の根拠となる「検査所見」および診断基準についても、最新の知見に基づいた修正が行われています。
感染症法における「全般的事項」の定義
以下の定義はMDRPに限らず、全ての感染症届出の基礎となる「第1 全般的事項」として改めて明示されました。
- 「同定」の定義: 病原体の検出における「同定」には、生化学的性状や抗血清による検査のほか、PCR法(LAMP法等の核酸増幅法全般を含む)による手法が含まれます。
- 臨床症状(体温)の定義:
- 発熱:体温が37.5℃以上を呈した状態
- 高熱:体温が38.0℃以上を呈した状態
薬剤感受性試験の基準と警告
厚労省通知(感感発1113第1号、令和7年11月13日付)をもとに作成した新旧対照表です。
令和8年(2026年)4月6日から「薬剤耐性緑膿菌感染症」は「多剤耐性緑膿菌感染症」として全数把握疾患となります。
主な変更の背景として、届出基準における各抗菌薬の耐性基準をCLSI 2019以降のバージョンに変更することが了承され、また定点把握から全数把握へ変更することも了承されました。
特に注意が必要な点として:
- カルバペネム系のMIC閾値が16→8 μg/mLに引き下げられており、以前は陰性だったケースが陽性になる可能性があります
- フルオロキノロン系もCPFX閾値が4→2 μg/mLに引き下げとなっています
- 届出が月次報告から診断後7日以内に変わるため、院内の報告フローの見直しが必要です

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3. 施行スケジュールと現場での事務手続き
改正の適用開始日および移行期間の特例は以下の通りです。
- 適用日:令和8年(2026年)4月6日
- 移行期間の特例
- 令和8年4月1日から4月5日までの発生分:従来通り「基幹定点」として、翌月初日の令和8年5月1日までに報告を行う必要があります。
- 新設される届出様式
- 全数把握化に伴い、新たに**「別記様式5-16」**が追加されます。
- 従来の定点把握用様式(様式6-6)からは、薬剤耐性緑膿菌感染症に関する記載が削除されます。
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4. まとめ:これからの感染症対策に求められる対応
多剤耐性緑膿菌(MDRP)感染症が全数把握疾患となることで、日本国内のAMR動向はより詳細に可視化されることになります。これは、個々の医療機関における感染対策の重要性が、公衆衛生上の法的義務としてより明確になったことを意味します。
各医療機関においては、令和8年4月からのスムーズな移行に向け、以下の準備を強く推奨します。
- 院内報告フローの確認:全ての医師が「別記様式5-16」を用いて遅滞なく届け出られる体制の構築。
- 検査基準の周知:最新の感受性基準(KB法の阻止円径等)の再確認と、臨床検査部門との情報共有。
薬剤耐性菌の蔓延を防ぐための精密なサーベイランス体制へ、現場の皆様の能動的な対応をお願いいたします。
【参照元】厚生労働省通知(感感発0205第2号 令和8年2月5日)
株式会社BML 「多剤耐性緑膿菌の判定基準変更のお知らせ」https://uwb01.bml.co.jp/kensa/pdf/BML2026-16.pdf


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