保健所立ち入りのときにウケる!ICT業務!

感染制御認定薬剤師

保健所の立ち入り調査では、病院のさまざまな業務が調査対象となります。今回は、筆者がICT(感染制御チーム)薬剤師として実際に経験した立ち入り調査の中で、特に評価されやすかった「ウケる業務」を3つ紹介します。感染対策担当者の方はもちろん、これから立ち入り調査を控えている施設の参考になれば幸いです。

保健所立ち入り調査とは

保健所立ち入り調査とは、年に一回、地区の保健所が病院を訪問し、感染対策をはじめとした各種業務が適切かつ清潔に運用されているかを確認する調査です。

「いつ来るの!?」と身構えてしまう方もいるかもしれませんが、基本的には事前に調査日が告知される「適時調査」が中心です。ただし、院内でクラスターや重大なインシデントが発生した場合には、告知なしの「抜き打ち調査」が実施されることもあるため、日頃からの備えが欠かせません。

保健所立ち入り調査の詳細については、こちらの記事もあわせてチェックしてください。
保健所立ち入り調査に備える ― 感染対策チームが注意すべきポイント

医療法における立ち入りについて
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/i-anzen/tachiirikensa.html

ウケる業務① 耐性菌監視ラウンド

2050年には、がんによる死亡者数を薬剤耐性菌による死亡者数が上回るとの予測もあり、耐性菌の出現・拡散をいかに抑えるかは、世界的にも喫緊の課題となっています。ICT薬剤師の役割は大きく分けて「抗菌薬の適正使用(Antimicrobial Stewardship)」と「耐性菌拡散防止」の2つですが、今回は後者の「耐性菌拡散防止」に焦点を当てて掘り下げます。

当院では、この活動を「耐性菌ラウンド」と呼び、毎週月曜日に定期的に実施しています。目的は、院内における耐性菌の水平感染を防ぐことです。対象となるのは、新規に検出されたMRSA、MDRP(多剤耐性緑膿菌)、2剤耐性緑膿菌などが検出された患者様です。

新規に該当菌が検出されると、検査部から薬剤部へ連絡が入り、翌週にICT医師とICT薬剤師が合同でラウンドを行います。ラウンドでは病室を実際に訪問し、人工呼吸器・酸素投与・CVカテーテル・尿路カテーテルなど接続デバイスの有無や管理状況を確認します。

確認後は、「耐性菌保持者マグネット」をベッドサイドの他職種から見える位置に貼付します。マグネットには、痰由来であれば「S:Sputum」、尿路由来であれば「U:Urine」といったように頭文字のみを表示し、患者様やご家族には内容がわからないよう配慮しています。これは不要な不安を与えないための工夫であり、一方で面会後の手指消毒は積極的に呼びかけています。

ラウンドの最後にはナースステーションへ戻り、看護師長やリンクナースへ耐性菌検出の状況を報告します。ラウンド記録は電子カルテに保存し、他職種がいつでも閲覧できる体制を整えています。こうした「実際に病室まで足を運び、記録し、多職種へ共有する」一連の流れが、立ち入り調査において高く評価されるポイントです。

ウケる業務② 研修会の理解度を測る確認テスト

感染対策研修会は年2回程度実施している施設が多いと思いますが、悩ましいのが欠席者へのフォローアップです。資料を渡してサインだけをもらう運用では、サインが集まっても内容を本当に理解してもらえているかは把握できません。

当院では数年前から、研修会の資料や録画映像を視聴してもらった後に「確認テスト」を実施しています。テストはGoogleフォームで作成し、QRコードに変換したうえで各部署へ配布する形式です。

例えば「速乾性アルコール手指消毒薬使用量に関する感染対策研修会」であれば、以下のような設問を用意します。

  • WHOは速乾性アルコール手指消毒薬使用時、1日1患者あたり20mLの使用を推奨している(正しい)
  • 速乾性アルコール手指消毒薬は5秒間手になじませることで効果を発揮する(誤り)
  • 感染経路別予防策は、標準予防策に加え、病原体の感染経路に応じて追加で行う感染拡大防止策である(正しい)

研修会は全職員が対象となるため、極端に難易度の高い問題は避け、資料をきちんと確認すれば回答できる内容に設定しています。正答率を集計することで、職員全体の理解度・認知度を客観的な数値として把握でき、立ち入り調査の際にも「教育の実効性」を示す根拠資料として活用できます。

ウケる業務③ 環境ラウンドを「見える化」する

環境ラウンドでは、速乾性アルコール手指消毒薬の期限切れや使用頻度、水回りの衛生状態、ペーパータオルの放置、おむつカートの管理状況、点滴ルートの管理などを巡視し、問題があればリンクナースや病棟看護師長へ口頭で伝達します。

しかし、口頭での伝達は、業務に追われる看護部では対応が後回しになりやすく、改善につながらないケースも少なくありません。そこで当院では、指摘事項を写真に撮り、「ICTニュース」などの媒体にまとめて発信する方法を取り入れています。

文字と写真によって視覚的に伝えることで、問題点がより明確に伝わるだけでなく、ICTニュースという形にすることで、指摘を受けた病棟だけでなく、院内の他の病棟・他職種とも情報を共有できるというメリットがあります。同じ問題が他部署でも起きていないか、横展開で確認するきっかけにもなります。

まとめ

保健所立ち入り調査では、マニュアルや会議記録が整備されているかどうかだけでなく、それらが「実際に現場で機能しているか」が問われます。だからこそ、事前の準備と日常的な運用の積み重ねが重要になります。

今回紹介した「耐性菌監視ラウンド」「確認テストによる研修会フォローアップ」「環境ラウンドの見える化」は、いずれも特別な設備を必要とせず、既存の業務フローに組み込みやすい取り組みです。ぜひ自施設のICT業務の参考にしていただき、立ち入り調査対策の一助としていただければ幸いです。

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